タンゴの流れる喫茶室

17時頃には代々木上原に到着しておく、ということでしたので、少々時間に余裕ができました。

というわけで、黄色の線に乗って、終点まで。

お目当ての喫茶室の重厚な扉を開くと、弦楽器の奏でるタンゴの旋律が耳に飛び込んできました。

『ジェラシー』。確かそんなタイトルであったはず。

午後まだ早い時間であるのに、店内は8割がた満席。一つ空いていたカウンター席を占めました。

古風なスタイルの制服に身を包んだ、内側で立ち働く兄ちゃんから、

『いらっしゃいませ』

と真顔で声をかけられました。

手書きのメニューに目を通すと、ラプサンスーチョンの記載がありました。一瞬、飲んでみたい衝動に駆られましたが、初めての店でもありますし、ここはまずオリジナルブレンドから。

兄ちゃんの背後は、一面、棚になっていて、ずらりと種々様々な珈琲カップが並べられています。

どういった基準があるのか、そもそもそんなものは存在しないのか、しかとは判りかねるのであるが、同じブレンドを頼んでも、それぞれ異なるカップで供されるようでした。

ちなみにワタクシのところには、薄に月、といったなかなかに風流な意匠のものでした。…先取り?

奥の方のテーブル席には、シックな着物をきりりと着こなした、すこぶる姿勢の良いご婦人方や、パナマ帽を粋にかぶったご高齢の男性など、いわゆる『カッコいい大人』な方々が座を占めていて、モボ・モガが夜毎に集う、大正時代のミルクホールにでもタイムスリップしたかのような気持ちになりました。

うん。『カッコいい大人』を目指したいものです。外見も中味も。