鯨の夫婦と人間の夫婦

ご老体の話しは面白い

いや…為になる

若い現代作家が

見てきたような書き物より

実に体験した話しは

私の想像を遥かに越え

その現場に居たものしか知り得ない

現実がそこにあるからである

アルコールで有れば何でも喜ぶご老体

飲みますか?

言わずがものである

土間に腰掛けるや

切り出しの挨拶もソコソコに

湯呑み茶碗に注がれる液体

訛りのきっい和歌山弁は

過去海の男であったことを物語る

飲むほどに

酔うほどに

饒舌になる

元海の男

南氷洋での捕鯨船

砲主であったプライドと気迫は

今も劣ろえを微塵も感じさせない

みょうと(夫婦)の鯨は必ずメスから銛を打ち込むんよー

男の鯨を先に打ち込むと

メスはバイバイしよる

おなごの鯨を先に銛を打ち込むと

オスはその回りをぐるぐる回って逃げよらん

人間も鯨もな

ほいでからよー

おいやん

おなごとはそんなもんじゃ

いささか心当たりのある

吾が輩

うんうんと頷き

ご老体宅を辞した