深手警戒、急いだ首相 今村復興相更迭 

安倍晋三首相は、東日本大震災が「東北で良かった」と発言した今村雅弘復興相の更迭を即決した。「震災復興は最優先課題」と掲げてきた政権の姿勢に疑問符が付けられてもおかしくないと懸念。閣僚ら政務三役の失言や不祥事も続いており、致命傷にならないよう警戒する。政権内では政務三役の資質に対する不安が漂い、早期の内閣改造論も浮上した。

■収束劇

 二十五日午後六時すぎ、官邸の首相執務室。経済財政諮問会議を終えたばかりの首相は菅義偉官房長官らを呼び、鳩首(きゅうしゅ)協議を開く。目の前に置かれたのは、四十分前の今村氏の発言を記したメモ用紙。「もう駄目だな。代えるしかない」。認識はすぐ一致した。

 首相は官邸を出ると、今村氏の失言が飛び出した自民党二階派のパーティーへ直行。あいさつ冒頭で「首相として、まずもっておわびをさせていただきたい」と謝った。首相周辺は「今村氏への怒りを込めた陳謝だ。今村氏本人もまずいと気付いただろう」と解説する。

 官邸サイドは今村氏があらためて謝罪、撤回するよう指示。その後、菅氏が東京都内でひそかに今村氏と会い直接、引導を渡す。失言から三時間ほどでの収束劇だった。

■憂い

 素早く更迭した背景には、首相が事あるごとに震災復興優先と触れてきた経緯がある。二〇一二年十二月の第二次内閣発足以降、被災地には三十回以上、足を運んだ。被災者の反発を招く言動は「信頼を崩しかねない」(政府筋)と神経を使う。

 先月、岩手県の台風被災地視察に絡み「長靴業界はもうかった」と発言した務台俊介内閣府・復興政務官を直ちに更迭したのも理由は同じ。今村氏の後任を被災地・福島県出身者から選んだのも「首相のメッセージ」(与党幹部)としてだ。

 首相は、新たに復興相に任命した吉野正芳氏を官邸に呼び込んだ後、記者団の取材に応じ、自らの任命責任にも言及。「おわび」を三回繰り返して「(政権に)緩みがあるとの指摘を真摯(しんし)に受け止めなければならない」と神妙に語った。低姿勢なのは、閣僚の失言や政務官の辞任など政務三役の失態続きを意識したからとみられる。官邸筋は「おごり批判が高まるのだろう」と覚悟する。

 足元の与党内でも「在庫一掃人事がリスクを招いた」(閣僚経験者)と危機意識が強まっている。現状を憂う政権幹部は「通常国会が閉じたら早く内閣を改造した方がいい」と早めの手当てを主張した。

■嘆息

 ただ今回のスピード決着が奏功するかは見通せない。

 後半国会は天皇陛下の退位を実現する特例法案や、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案など課題が山積する。今村氏を巡る騒動で二十六日の国会はほぼ空転した。野党が求めた首相出席の衆参両院予算委員会開催も政権側は受諾。六月十八日の会期末までの日程は窮屈感が増す。

 野党は今村氏の議員辞職を要求し、ボルテージを上げる一方だ。残り会期の「いばらの道」を思う自民党竹下亘国対委員長は二十六日、野党や公明党の国対幹部を訪ね「ひたすら謝って歩いた」と嘆息した。二階俊博幹事長からは「マスコミは一行でも悪いところがあれば首を取れと。なんということか」と、やけっぱちにも映るメディア批判が飛び出す始末となった。